母の生と死に向き合う。

素敵にいってみよう

母のこと

第15話 みんなで深夜、病院へ

更新日:

5月6日。
ゴールデンウィークも今日で終わり。
大変だったけどなんとか終わったなあ。
安心して、そろそろ寝る準備をしていた、その時。

電話が鳴った。

顔がこわばる。
こんな時間に。
間違いだったらいいのに。
けれど、携帯には病院の名前が出ていた。

「お母様の数値が下がってきています、身内のかたに連絡してあげてください」

はじめは、私と父だけで行くつもりだったが、
子供が二人とも起きて、泣きながら一緒に行くといってきかない。
仕方がない、時間もないで、みんなでそろって病院に行った。

母は集中治療室に移っていた。

でも意識はあり、眼差しもしっかりしていて、
「あれ、来たの?」という感じでこちらを見た。

なるだけふつうに「ちょっと来てみたよ」と声をかけた。

深夜の病院。子供に静かにするよう、言って聞かせたが。
あまり長居できる雰囲気ではない。

こんな時なのに。
父は「帰るぞ!早く来んか!」と怒鳴る。
「うるさいわ!」と言い返したい気持ち。

私が残りたいのに、車を運転できるのは私しかいないのだ。

ちょっと考えて、私は母にこう切り出した。

「お母さん!もう家に帰ろう!
 私が先生に話をするから!もういいから帰るよ!
 介護は私がする。早くここを出ましょう。出るよ。
 だから、今は頑張って」

頷く母。

「私の知り合いが倒れた時、
 お医者さんが『今夜が峠です』と目の前で家族に言っているのが
 しっかり本人に聞こえていてね。
 その人は治って、退院する時そのお医者さんに
 『私全部聞こえてたんだからね!』と言ったそう。
 だからお母さんも、ここを出るとき言ってやりや」

笑う母。一緒に私も笑った。

「じゃあお母さん、後でね!」

私は部屋を出た。
看護師さんに廊下で「まだ数値が安定していませんが・・」と言われたが、
「すみませんが一旦帰ります、明日の朝一で来ます」
そう言って、子供を連れて、病院を出た。

この時、私の日記にはこう書いてある。

「こういう時に弱気になってはいけない。
 最後がいつ来るかはまだ未定。
 まだ未定なんです。」

もちこたえてくれ、母ちゃん!!


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