5月6日。
ゴールデンウィークも今日で終わり。
大変だったけどなんとか終わったなあ。
安心して、そろそろ寝る準備をしていた、その時。
電話が鳴った。
顔がこわばる。
こんな時間に。
間違いだったらいいのに。
けれど、携帯には病院の名前が出ていた。
「お母様の数値が下がってきています、身内のかたに連絡してあげてください」
はじめは、私と父だけで行くつもりだったが、
子供が二人とも起きて、泣きながら一緒に行くといってきかない。
仕方がない、時間もないで、みんなでそろって病院に行った。
母は集中治療室に移っていた。
でも意識はあり、眼差しもしっかりしていて、
「あれ、来たの?」という感じでこちらを見た。
なるだけふつうに「ちょっと来てみたよ」と声をかけた。
深夜の病院。子供に静かにするよう、言って聞かせたが。
あまり長居できる雰囲気ではない。
こんな時なのに。
父は「帰るぞ!早く来んか!」と怒鳴る。
「うるさいわ!」と言い返したい気持ち。
私が残りたいのに、車を運転できるのは私しかいないのだ。
ちょっと考えて、私は母にこう切り出した。
「お母さん!もう家に帰ろう!
私が先生に話をするから!もういいから帰るよ!
介護は私がする。早くここを出ましょう。出るよ。
だから、今は頑張って」
頷く母。
「私の知り合いが倒れた時、
お医者さんが『今夜が峠です』と目の前で家族に言っているのが
しっかり本人に聞こえていてね。
その人は治って、退院する時そのお医者さんに
『私全部聞こえてたんだからね!』と言ったそう。
だからお母さんも、ここを出るとき言ってやりや」
笑う母。一緒に私も笑った。
「じゃあお母さん、後でね!」
私は部屋を出た。
看護師さんに廊下で「まだ数値が安定していませんが・・」と言われたが、
「すみませんが一旦帰ります、明日の朝一で来ます」
そう言って、子供を連れて、病院を出た。
この時、私の日記にはこう書いてある。
「こういう時に弱気になってはいけない。
最後がいつ来るかはまだ未定。
まだ未定なんです。」
もちこたえてくれ、母ちゃん!!