母の生と死に向き合う。

素敵にいってみよう

母のこと

第1話 小さな、おかしなこと

投稿日:

 

3月20日、お昼前。
実家で用事を済ませて、うちに帰ろうとしたときのことです。

おもむろに母が「うどんを作ってほしい」と言いました。

えっ、うどん??

こんなことは今までありませんでした。
今までは、台所は母のテリトリーで、
私が何か作ろうものなら
顔に思いきり「嫌」と書いたような母が出てきて

「どうするの」「それは誰が食べるの」
「今から私が作るから勝手にしないでちょうだい」
「そんなものを作ってもおいしくない」

などと言い、平気で人のモチベーションを下げていました。
(今書くと‥ちょっとほんとひどくない?(^_^;)笑)

結婚して家を出て、ようやく自分の台所が持ててからは、
実家の台所は、もう触らないようにしていました。  

そんな母が、私にごはんを作ってくれと言うなんて。

私は早く帰ろうとしていたのだけれど・・
けれど、なぜか。

妙な胸騒ぎがしました。

なんとなく、ここで「いや用事あるから」と帰ってしまったら
後悔しそうな気がしたのです。

だから、台所でいろいろ探しながら
うどんを作って、一緒に食べました。

しばらく使っていなかった、
子供の頃によく使っていた丼(下の写真です)を
戸棚の奥から出してきて。
なんでわざわざそんなことをしたのか、
今考えても不思議です。

母はぽつりと言いました。
「うん、おいしい、おいしい・・」  

この言葉は、今は私の宝物になりました。

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